唐辛子「プリック」の世界は奥が深い

タイやタイ料理が好きな人は「プリッキーヌーが最も辛い」ということを経験的に知っている。タイ料理にプリッキーヌーが入っていたり、添えられていたりすると自然に身を構えるが、赤い大きなプリックの斜め輪切りだと何となくホッとする。

我々は「プリック=辛い」が頭に染みついているが、辛くないプリックが果たしてあるのだろうか、それが全く辛くないピーマンやパプリカも同じナス科のトウガラシ属 Capsicum に属するのである。

「Prick(プリック)」は動詞で「針などでちくりと刺す」、また名詞でその「ちくちくする感覚」という意味である。余談であるが、プリックは英語のスラングで男性器のことだという(笑)

タイでは、トウガラシ属 Capsicum に含まれる植物全てを「プリック」と呼んでいる。

辛さの度合いにより大きく3つのグループに分類した。

レベル1:全く辛くない

レベル2:少し辛い~辛い

レベル3:非常に辛い

このつぶつぶが「元祖プリック」である アユタヤ王朝時代にポルトガルから中南米産の唐辛子がタイに持ち込まれ、それまではタイでは胡椒のことを「プリック」と呼んでいたが、唐辛子が入ってくると唐辛子のことを「プリック」と呼び、元からあった胡椒は「プリック・タイ」と呼び区別するようになったと云われている

唐辛子プリックはタイ料理には欠かすことのできない食材であり、市場にはいろんな種類のプリックが販売されている

プリック・ワーン พริกหวาน  プリック・ワーンを直訳すると「甘い唐辛子」の意味でピーマンやパプリカのことである レベル1まったく辛くない

プリック・ワーン พริกหวาน の断面

プリック・ユアック พริกหยวก ずんぐりした大型唐辛子 レベル1全く辛くない

プリック・ユアック พริกหยวก の断面

プリック・ヌム พริกหนุ่ม 北タイの「ナムプリックヌム」は、この唐辛子を焼いてペースト状にしたもの レベル2辛味の少ない唐辛子

プリック・ヌム พริกหนุ่ม 食堂のテーブルに置いてある酢の中に輪切りにして入っている

赤・緑2色のプリック・ジンダー พริกจินดา レベル2辛い

赤いプリック・ジンダー・デーン  緑のプリック・ジンダー・キヤウ

プリッキーヌー พริกขี้หนู    プリック・ジンダー พริกจินดา

ターニン市場では プリック・ドイ พริกหดอย と呼んでいたが、一般的には プリック・カリヤン พริกกะเหรียง と呼ばれている レベル3非常に辛い

プリッキーヌー พริกขี้หนู レベル3最も辛い

プリッキーヌー・スワン พริกขี้หนูสวน レベル3非常に辛い

プリッキーヌー・スワン พริกขี้หนูสวน レベル3非常に辛い

コンドミニアムの庭に生えているプリッキーヌー พริกขี้หนู 上を向いている ときどき住人が摘んで料理に使っている

プリック・ヘン พริกแห้ง 乾燥唐辛子 レベル2少し辛い

プリック・ヘン 乾燥唐辛子にはプリッキーヌー・ヘンもある

大きなスーパーマーケットには唐辛子のスナック菓子も並んでいる

ガツンとくるかと思ったらそうでもなく、後からじわじわっと舌とのどが痺れる辛さだった

タイにはいろんな種類と辛さのプリックがある

タイにおけるプリックの辛さの順位トップ10

プリック・ナンプラー พริกน้ำปลา

プリック・ナンプラー พริกน้ำปลา

プリック・ナンプラー พริกน้ำปลา

プリック・パット พริกผัด あるいは プリック・カオソイ พริกข้าวซอย と呼ばれている非常に辛いカオソイに入れる辛味噌 これは唐辛子を炒めて作るという

非常に辛いプリッキーヌーを使ったナムプリック

辛い青唐辛子を使ったナムプリック

赤唐辛子を使ったナムプリック

ガイヤーン用のナムプリック 少し辛い

茹で豚肉用のナムプリック

チェンマイ名物サイウア用のナムプリック

茹でキノコにつける乾燥ナムプリック

北タイ料理「ネームと卵の蒸し物」ネームモックカイに生プリッキーヌーがついてくるのでこれを囓りながらネームをいただく 1~2本あれば十分

ブロック切りにした「豚肉の発酵ソーセージ」ネームに生の赤唐辛子プリック・ジンダー・デーンの輪切りがついてくる

豚の血を混ぜたご飯のバナナ葉の包み蒸しカオガンジンには乾燥唐辛子「プリック・ヘン」が添えられている

エビみそ混ぜご飯カオクルックガピ、細かく切ったプリッキーヌーも一緒に混ぜていただく プリッキーヌーは半分残して混ぜた

市場などで唐辛子プリックを販売している人たちは唐辛子を形の違いや辛さの違いによってプリックを分類し、買う側のニーズに応えているのである。

しかし学術的な学名は、トウガラシもピーマンもパプリカもプリッキーヌーもシシトウも学名は皆同じで Capsicum annuum で同種である。 ちなみにトウガラシの辛味成分のカプサイシンは属名 Capsicum に由来し、種小名の annuum は一年草を意味する。

唐辛子類はすべて同種であるが土壌や気候などのトウガラシの育つ環境の違いによって少しずつ種内変異が生じ、それに加え人類の育種技術の進歩により多様化してきたのである。ピーマンもパプリカも元は辛かったはず。

それで唐辛子類の名前は便宜的なものであって、区別のつかないトウガラシがあっても不思議なことではない。

トウガラシがピーマンやパプリカと生物学的に同種であれば、沖縄の島唐辛子も当然同種と思いネットで一応調べてみたら、学名は Capsicum frutescens という同属の別種であった。

自分自身の結論、唐辛子プリックにおける種内変異、栽培品種、同種、別種、商品名もう何だか分からない。色が赤や緑で大小問わずいわゆる唐辛子の格好をしたものを全てひっくるめて「プリック」でいいじゃないか。

市場でプリックを売り買いしている人たちにとっては、辛さや食感の違いが取り敢えず遺伝的に安定していれば「商品名」は必要だな。

投稿者: パッタイ

タイの自然や文化、人が好きです。

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