カノムクロックは、小麦粉と上新粉にココナッツミルクと砂糖を混ぜた生地を、半球状に窪んだ専用の焼き器で接触面だけ焼いたものを2つ合わせて作るタイの伝統的な焼き菓子です。
焼き色のついた外側のサクッとした食感と、中のトロリとしたココナッツミルクの風味がマッチし、半球面に万能ネギやコーンが散らされるのが特徴です。食べると口の中でココナッツミルクの甘い香りが広がります。
~ 切ないカノムクロック物語 ~
昔ガティという男がいました。
ガティは灯籠流しの夜、土地の有力者である床屋のひとり娘ペーンと恋に落ちました。
ふたりは水牛の背に揺られながら輝く満月の下で誓いました。
「この先どんな障害が待ち受けていようとも、この真実の愛を貫き通そう」と
その後ガティはペーンと結婚するために一生懸命働きました。
苦労に苦労を重ねようやく結婚のためのお金を貯めたガティは、結婚の承諾を得ようと床屋の父の元を訪ね、娘ペーンとの結婚を乞いました。
しかし、ガティのことを快く思っていなかったペーンの父は、集めていた男たちと共にガティを痛めつけました。
身体はひどく傷つき、何日も起き上がれない状態が続いたガティ、それでもガティは諦めませんでした。
やがて父は町の若い有力者とペーンを結婚させることにした。
このことを知ったガティはペーンの元へ走ります。
しかし、父は一枚上手
ガティが来ることを想定していた父は、あらかじめ落とし穴を掘ってガティを待ち伏せ、罠に引っかかったらガティを埋めるよう仲間に指示していました。
この父親の悪巧みを知ってしまった娘ペーン
ガティに知らせるべく夜の森の中を歩きます。
ガティとペーン、偶然にもふたりは出会うことができました。
目が合い、あゆみ寄ろうとしたその瞬間、ペーンが落とし穴に落ちてしまいました。
すぐに駆け寄ったガティは、落とし穴の中で気を失っているペーンを助けるため穴の中に飛び込みました。
それを父の仲間たちはガティが罠にかかったと思い、ふたりをそのまま埋めてしまいました。
翌朝父が目にしたのは、ペーンを抱きかかえ、幸せの中で生き絶えたふたりの姿でした。
それを見た父は涙に暮れ、
「なにびとも、愛を妨げてはならない」
と思い、この思いを広く世に知らしめるためその場に碑を建てました。
それ以来、「ガティ(ココナッツミルク)」と「ペーン(粉)」で作られたお菓子が作られるようになりました。
そのお菓子の名は「カノム・コンラッカンขนมคนรักกัน」(愛し合うふたりのお菓子)
これがカノムクロックの由来です。
カノムクロックが焼きあがった2つを合わせるのは
「ふたりがいつまでも一緒にいられるように」
という願いが込められているのです。
「カノムクロック」、切なくも素敵なタイのお菓子です。
子供たちにも大人気のカノムクロックは、ココナッツミルクが主な材料。半球状に窪んだ専用の焼き器に生地を流し込む。タイ東北部スリンの夜市

焼けたら薄いアルミのレンゲですくい上げる

溶いた生地をやかんに入れ、窪みに流し込む。そして頃合いを見て万能ネギやコーンを散らす。タイ南部トゥンソンの夜市

焼き上がった半球状のカノムクロックは、「ふたりがいつまでも一緒にいられますように」と願いを込めて2つ合わせて球形にして売られている。タイ東北部ウボンラチャタニでのある日の朝食。買ったカノムクロックは市場内のコーヒースタンドで。カノムクロック 10バーツ(35円)、お茶付きコーヒー 15バーツ

Thai traditional sweets
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