今や日本の「糞茶」と言えば、サクラケムシの糞茶を思い浮かべる。『昆虫は美味い!』の著者である内山(2019)は次のように述べている。
サクラケムシそのものも美味しいが、香りが楽しめる虫糞茶も良い。捕まえたサクラケムシをしばらく飼育して、糞を集めて乾燥させて作る。急須で淹れる際にお茶パックに入れると糞が散らばらない。糞は桜の葉からできたものなので、味は桜茶のようである。葉っぱの青臭さは無く、上品な香りがする。
チェンマイ大学昆虫学研究室で飼育されている巨大ナナフシ

一方、昆虫食の大国タイの糞茶に関する話はあまり話題に上らない。
安松(1965)は、『昆虫物語』の中で次のように語っている。
1963年の11月のこと、私がバンコク市のカセツアール大学の昆虫学教室を訪れたとき、その昆虫飼育室に体長15センチをこすと思われる大きなナナフシムシの一種 Eurycnema sp. を飼っているのを見た。よく調べると、その糞を沢山にためているので、どういう理由かを尋ねたところ、このナナフシムシは地方名をタクタン・キンマイと呼び、グアバの葉で飼い、糞を集めるのが目的であるという。糞を火でいって、これに熱湯をかけ「糞のお茶」にして飲むので、消化に非常によいということであった。タイ国の薬店には、時折これを飼育して「糞」を売っている由であった。「虫の糞」のお茶は、私も試飲すべく、いくらかを持ち帰ったが、標本として保存しているので、まだ飲んでいない。
僕の研究室でも一時期グァバ葉でナナフシを飼っていた

僕は学生の頃から、昆虫学および東南アジア、特にタイの昆虫食文化という側面から昆虫食に関心を抱いてきたが、この数年、日本の一部の若者たちの熱狂的な昆虫食ブームに触発されている。
クリスマス虫ケーキやゴキブリのパエリア、コオロギのコロッケ、セミ幼虫のペペロンチーノなどいろいろ体験した。
さらに去年バンコクの高級昆虫レストランに行って昆虫食の概念が大きく変わった。それまでは主に夜市の昆虫屋台や郷土料理店や街中の市場での経験と見聞であった。
最近はコロナ禍のため Facebook や Twitter、ホームページなどで情報収集をおこなっているが、コロナが明けたら積極的にフィールドワークしようと思っている。
糞茶もいろいろ試してみたい。